小児歯科学雑誌
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予防〓塞に関する研究
酸腐蝕エナメル質に及ぼすフッ化物溶液の影響
堀口 浩
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1983 年 21 巻 3 号 p. 353-375

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抄録

予防〓塞の前処理として行われている酸処理はシーラントとエナメル質との接着力向上に有効であり,必要不可欠なものである。反面,酸処理はエナメル質を人為的に脱灰し,歯質に侵襲を加えるものと考えられる。そのためシーラントにより被覆されない酸腐蝕エナメル質に対しては歯質の強化ないし再石灰化の促進を配慮しなければならない。そこで本研究では酸処理がエナメル質の性状におよぼす影響ならびに酸腐蝕エナメル質に対するフッ化ナトリウム溶液(フッ素イオン濃度9000ppm,500ppm,10ppm,pH6.5~6.8)の効果を検索するためin vitroによる実験を行なった。
その結果,従来行われている酸処理方法では均一な酸腐蝕歯面は得られず,これに超音波操作を併用することによりほぼ全面に小柱構造が明瞭な像が観察された。また酸処理を施すことによりエナメル質表層の結晶性は低下する傾向が認められた。フッ化物溶液の影響として,フッ素イオン濃度9000ppm,500ppmに7週間浸漬したエナメル質にフッ化カルシウムの生成が認められた。さらに酸腐蝕エナメル質の結晶性はフッ素イオン濃度500ppm,10ppm溶液作用により向上する傾向が認められた。
以上の結果,酸処理を行うことにより粗〓となり,結晶性が低下した酸腐蝕エナメル質に対しては,低濃度フッ化物溶液の適用が結晶性を向上させ,歯質の強化あるいは再石灰の促進に役立ち,好ましいことが示唆された。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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