抄録
Phenytoin(DPH)の長期投与を受けている重症心身障害児(36名)を対象に,DPHの唾液成分に及ぼす影響を調査した結果以下の結論を得た。
1)DPH投与群の混合唾液中Ca,Pi濃度の平均値は,対照群より有意(p<0.001)に高い値が得られた。
2)混合唾液中Ca濃度は血漿総DPH濃度(rxy=0.711,p<0.001),血漿蛋白非結合型DPH濃度(rxy=0.724,p<0.001),混合唾液DPH濃度(rxy=0.627,p<0.001)との間に正の相関が認められた。
3)混合唾液中Pi濃度は混合唾液DPH濃度(rxy=0.417,p<0.001),血漿総DPH濃度(rxy=0.408,p<0.02),血漿蛋白非結合型DPH濃度(rxy=0.393,p<0.05)との間に正の相関が認められた。
4)1時間あたりの分泌量を乗じた混合唾液中Ca,Pi分泌量も各検体に正の相関が認められた。
5)DPH投与群の血漿中Ca,Pi濃度はCaとPiの積において投与群の方が低い傾向(p<0.02)がうかがわれた。
以上の結果,従来からのDPHの副作用としてカルシウム代謝に及ぼす影響のほかに,唾液中のCa,Pi濃度にも変動が現われることを指摘した。