小児歯科学雑誌
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グラスアイオノマーセメントの二次齲蝕発生抑制効果に関する基礎的研究
棚瀬 精三
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1983 年 21 巻 3 号 p. 426-440

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抄録
本研究では,グラスアイオノマーセメントの二次齲蝕発生抑制効果を検討するために,まず二次齲蝕発生にかかわる諸条件,すなわち,充〓歯の辺縁微少漏洩,フッ素溶出量,pH変化について比較検討し,さらにグラスアイオノマーセメントの窩壁歯質に対する影響を明らかにするため,窩壁エナメル質についてはin vitroにて,従来のシリケートセメント,およびコンポジットレジンを比較検討し,窩壁象牙質についてはin vivoにて実験を行い,本セメントの二次齲蝕発生抑制効果について基礎的な検討を行った。その結果,窩壁エナメル質においては本セメントより持続的に溶出するフッ素イオンの浸透により,耐酸性の向上が認められ,またエナメル質アパタイトのa軸方向において結晶性の向上が認められたが,エナメル質内層部窩壁においては,本セメント中に残留する酸によりわずかな表層下脱灰が認められ,エナメル質アパタイトのc軸方向に結晶性の低下が認められた。窩壁象牙質においては,フッ素イオンの浸透が約100μmの深さまで認められ,窩壁象牙質表層部での管周象牙質の石灰化の亢進,および細管開口部の狭窄が認められた。
以上の結果から,本セメントから溶出するフッ素イオンにより歯質が強化され,二次齲蝕発生に対する抑制効果が示唆された。
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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