抄録
後継永久歯,特に下顎永久側方歯群の萌出と,それに関与する諸要因との関連性について統計学的な分析を行ない,考察を加えた。
資料は,男子20名の経年的に撮影された左右の45。斜方頭部X線規格写真である。
これより,月齢,永久犬歯・第1小臼歯・第2小臼歯の萌出量および歯胚形成最,乳犬歯・第1乳臼歯・第2乳臼歯の歯根吸収量,下顎骨成長量の合計11個の変数を求め,これら変数間の単相関係数,偏相関係数,および多重決定係数を算定した。
その結果,月齢の影響を除いた後の偏相関係数において,先行乳歯の歯根吸収量は萌出量と高い相関性を有し,萌出量の評価に重要な要因であることが明らかになった。
次に,萌出量を従属変数,歯胚形成量・月齢・月齢の2乗(月齢)・月齢の3乗(月齢)・乳歯根吸収量・下顎骨成長量を独立変数とした重回帰分析の結果,金田一による単一の変数にもとづく多項式分析結果と比較して,やや高い多重決定係数が得られた。
つまり,複数個の要因を組み合わせることによって,萌出に関連する個々の要因の影響が反映され,より正確に萌出量の予測ができることが明らかになった。