小児歯科学雑誌
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電極内蔵法による小児および成人での歯垢内酸産生能に関する研究
I.歯垢下pH測定装置と電極表面に形成された歯垢の走査電子顕微鏡による観察
千田 隆一
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1984 年 22 巻 1 号 p. 125-136

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抄録

pH-ISFET を用いて,歯の欠損のない被験者に,また歯列の変化の著しい小児にも適用が可能な「口腔内歯垢下pH測定装置」を考案・作製し,成人及び小児においてpHの測定を行った.また,pH-ISFET 及び隣接エナメル質片上に形成された2日目,4日目6日目の歯垢を,SEM により観察した.
鋳造法でメタルボックス(10×7×2mm)を作製し,それに矯正用維持装置ST-lockをろう着して,上顎臼歯頬側に保持できるようにした.その中にpH-ISFET をエナメル質片上において設置し,リード線は装置装着時にはボックス内に収納できるようにした.
この装置を成人(29歳)と小児(9歳)に装着し,4日後に10%庶糖溶液滴下時のpHの測定を行った.成人では滴下10分後に最低pH4.1を示し,滴下時より初期pHに回復するまでに65分を要した.また,小児では10分後最低pH4.2を示し,回復するまでに32分を要した.
pH-ISFET上に歯垢の形成が確認された.また,pH-ISFET及び隣接エナメル質片上に形成された歯垢は,初期では球状の菌が支配的であり,aging が進むにつれて糸状の菌が支配的となり,両者に著しい相違は認められなかった.
本装置が,歯垢のpHをin situ で連続的に測定する上で,また,小児における齲蝕予防を考える上で,有用であることが示された.

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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