小児歯科学雑誌
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1歳6ヵ月児歯科健診に関する研究
上唇小帯について
野坂 久美子山田 聖弥守口 修佐々木 勝忠丸山 文孝松井 由美子甘利 英一
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1984 年 22 巻 1 号 p. 262-271

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抄録
全国9地区において,1歳6ヵ月児歯科健診を行い,その項目の1つに上唇小帯を設定し,異常と診断されたものの出現頻度,経年的変化,左右上顎乳中切歯の間の空隙との関係について検索した.対象は1歳6ヵ月から3歳6ヵ月時まで,6ヵ月毎に連続5回受診した902名である.
1歳6ヵ月時において,上唇小帯は正常と異常に分類され,異常形態はさらに5型に分類することが出来た.異帯小帯は増齢に伴い減少し,その出現率は,1歳6ヵ月時で27.3%であったものが,3歳6ヵ月時では5.9%になった.さらに異常小帯の個人別における経年変化でも,1歳6ヵ月時でのみ,異常と判定され,その後,正常へ戻ったものが全上唇小帯異常者の約半数であった.これらのことは1歳6ヵ月時で上唇小帯異常と判定されても,直ちに形成手術を行ってしまうことは危険であり,経過観察が必要と思われた.
左右上顎乳中切歯間の空隙について,全対象者902名のものと比較すると,どの年齢時でも上唇小帯異常者の方が明らかに空隙保有者率が高かった.また,上唇小帯異常者では,空隙保有者率は1歳6ヵ月時を除き,どの年齢時でも過半数以上を占めていた.その割合は増齢に伴いより著明で,1歳6ヵ月時で48.4%であったものが,3歳6ヵ月時では73.6%であった.このことは3歳6ヵ月時まで異常として経過して来たものに,空隙保有者が多く,異常小帯は空隙の誘因になっているものと思われる.
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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