抄録
1歳6ヵ月児歯科健診の診査基準,方法および指導内容の向上を目的として,全国9地区で,同一個人を対象に,1歳6ヵ月から3歳6ヵ月まで6ヵ月毎に視診型の歯科健診を行った.その健診内容の一つに,将来の永久歯列形成などの重要な因子の一つとなる,歯間空隙についての項目を設定し,検索した.なお,計5回の健診を連続受診した902名の幼児を対象とした.
1)空隙の出現状況では,1歳6ヵ月時,2歳0ヵ月時で,地区による差が多く認められたが,その後,年齢が増すにつれその差は減少した.
2)切歯部の空隙の出現率は,経年的に増加し,側方歯群部では,逆に減少した.
3)上下顎の比較では,上顎のほうが空隙の出現率が高かった.空隙は,上下顎とも乳犬歯の近遠心の歯間部の出現率が高く,しかも,霊長空隙に一致した部位が最も高かった.
4)上下顎左右乳中切歯間の空隙の各個人の経年変化では,上下顎とも,5回の健診を通じて,空隙のないまま経過するものが,全体の約1/2存在した.また,空隙が,ある年齢時から出現するものが,とくに下顎において多く,全体の約1/5存在した.
5)空隙と齲蝕との関係では,空隙のないものが,あるものに比べ,有意差を持って齲蝕が多く,とくに1歳6ヵ月時で著しかった.