小児歯科学雑誌
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(NH4)2MoO2F4の歯質無機質相に及ぼす影響に関する研究
落合 伸行
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1984 年 22 巻 1 号 p. 36-66

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抄録

(NH4)2MoO2F4 の齲蝕抑制機序の一端を解明するために, 歯質無機質相に及ぼす影響を合成CO3-Apatite およびエナメル質を用いて検討した.
その結果, (NH4)2MoO2F4はCO3-Apatite と反応して, Fluoridated apatiteおよびCaF2を, フッ素のみを含有する薬剤よりすみやかに生成し, モリブデンはアパタイト結晶格子内に置換する可能性が示唆された.同時に, CO3-Apatite 中の炭酸含有量を減少させ,耐酸性を向上させた.
高濃度の(NH4)2MoO2F4 はCO3-Apatite と反応して著明にCaF2を生成し,生成されたCaF22 および取り込まれたモリブデンは人工組織液中では徐々に溶出し, Fluoridated apatlte を生成し, モリブデンはアパタイト結晶格子内に置換する可能性が示唆された.
高濃度の(NH4)2MoO2F4 処理により, 健全エナメル質の耐酸性は向上し, フッ素およびモリブデンは健全エナメル質中に浸透し, 表層部にはCaF2 の生成およびモリブデンの存在が判明した.
以上のことから, (NH4)2MoO2F4 は歯質無機質相とりわけ健全エナメル質に対して抗齲蝕性を付与する有望な薬剤であることが示唆された.

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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