小児歯科学雑誌
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先天性歯の1例
鬼塚 一徳木村 光孝篠崎 英一永山 武彦渡辺 尚海石井 貴三男
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1984 年 22 巻 1 号 p. 387-393

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抄録
出生時あるいは新生児期に早期萌出した乳歯を一般に先天性歯と呼んでいる.今回著者らは,生後14日目,女児の下顎乳中切歯部に発現したA〓Aによると思われる先天性歯を経験した.患児の家族歴,既往歴に特記事項はなかった.患歯は動揺が著しく,授乳障害があったため抜去した.
抜去歯牙の大きさは,正常乳歯の平均値と比較して小さく,またソフテックス像により一部にエナメル質を欠いた像が認められた.病理組織学的検索を行なった結果,歯髄,Hertwigの上皮鞘および象牙質については異常所見は認められず,ほぼ正常像であった.
エナメル質については,その表面構造を走査型電子顕微鏡で観察した結果,周波条を欠如した部やエナメル小柱が斜断された像が認められ,明らかにエナメル質形成不全であることが確認された.
以上の結果と文献的考察により,硬組織が未だ形成不全のまま萌出した先天性歯の運命は,順調に歯根形成が行なわれたとしても,予後は悪いと考える.
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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