抄録
顎関節症とは,顎関節疼痛・顎関節雑音・異常顎運動などの症状を単独かあるいは合併して有し,全身疾患と関連のない非炎症性の一連の症候群をいう.著者らは,鹿児島大学歯学部附属病院小児歯科外来を訪れ,顎関節症と診断し治療を行った患児のうち,代表的治験例4例を通し,我々の考え方と当講座の一応の臨床の流れを提示した.
症例1は,症状が自然消失したので,咬頭干渉を除去するため,咬合調整および咬合再構成を行った.症例2は,病因が不明瞭であったため,オクルーザル・スプリント装着後咬合調整および咬合再構成と8 8の抜去を行った.症例3は,急性症状をともなっていたので前歯灘型スプリソトの装着を行い,2/2の早期接触部除去のため,矯正処置後,咬合調整および咬合再構成をおこなった.症例4は,2/2の早期接触部が主因と考えられ,症状も軽微であったため,矯正処置をおこなった.
今後,我々は,本報告で提示した臨床の流れに従い,思春期の顎関節症の発症機序の解明と診断,治療の確立のため,研究を進めていく所存である.