抄録
今回われわれは,5歳2ヵ月男児の左側下顎骨に発生し,放射線療法,化学療法を行い10年経過した現在歯,顎骨の発育不全はみられるものの,予後良好な肉腫の1例を経験した.
1.初診時,左側頬部およびDE6にび漫性の有痛性腫脹および著明な圧痛が認められ,3週間前抜歯された6部の治癒状態は不良であった.さらにX線所見では左側の下顎小臼歯から下顎枝にかけ皮質骨の消失,および骨膜が層状に肥厚したと思われるいわゆる“onion peel”がみられた.
2.治療はTele60Coによる放射線療法,シクロホスファミド,硫酸ビンクリスチンによる化学療法を行った.
3.治療後10年の所見は,顔貌は非対称で,X線的には_??__??__??_歯の根の短小,7の埋状,左側下顎骨の強い発育不全が認められ,これらは放射線治療によるものと考えられた.しかしながら,器質的な異常はみられなかった.