抄録
8歳3ヵ月女児の線状皮脂腺母斑症候群(LNSS)の1例を報告した.患児は在胎37週,正常分娩,体重3,100gで出生し,生下時より顔面に線状脂腺母斑を認め,点頭てんかん,精神運動発達遅延を有していた.LNSSの口腔領域の合併症としては,高口蓋,口蓋裂・口蓋垂裂,口腔粘膜異常,歯の異常などが報告されているが,歯科より詳細に報告されたものは,海外で数編をみるにすぎない.
本症例では,上唇・頬粘膜・上顎歯肉・口蓋粘膜・舌の各部位において正中より右側に肉眼的異常を認め,歯肉・口蓋粘膜の生検で著しい錯角化と網稜の延長を認めた.上顎右側永久歯6 4321の歯冠近遠心幅径は日本人平均値(大坪)に比べ大きく,特に321は著しく大きく形成異常,異所萌出がみられ,開咬,歯列不正を呈していた.頭部X線写真による頭蓋・顔面の骨形態については,著しい異常は認められなかった.