小児歯科学雑誌
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小児唾液中の脂肪酸に関する検討-成人唾液との比較-
笹島 光男
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キーワード: 小児全唾液, 組成比, 脂肪酸
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1985 年 23 巻 1 号 p. 178-186

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抄録
従来より小児の唾液については,その成分や組成はもとより年齢的な変動など,生理,生化学的な定性,定量の面からの研究はほとんどみられない。
しかしながら,唾液が口腔疾患と深く関わりをもつことが知られていることもあって,成人唾液についてはすでに種々の面からの研究が行われてきた。
以上のことから著者は,小児唾液についても検討を試みるべく,今回はとくに唾液中に含まれる脂肪酸を検出し,成人唾液中の脂肪酸の組成などとも比較検討を行なった。その結果次の様な結論を得た。
1.小児それぞれの全唾液よりパルミチン酸,ステアリン酸などの脂肪酸がすべての試料から,そしてミリスチン酸は一部を除き検出された。
2.成人それぞれの全唾液よりミリスチン酸, パルミチン酸, ステアリン酸などの脂肪酸がすべての試料から,そしてカプリン酸,ラウリン酸は一部の試料を除き検出された。
3.小児全唾液中の脂肪酸量は個体別で異なりが大きかったが,成人では個体間の差が少なかった。
4.小児全唾液中の脂肪酸との構成の割合は, ステアリン酸とパルミチン酸の両老で9 5% 占められていたが, 成人ではパルミチン酸とステアリン酸の両者でほぼ7 7 % で,なかでも有臭物質であるカプリン酸が8%であったのに比較し,小児全唾液中にはカプリン酸が検出されなかったことが唾液の臭いと関わりをもちものと推測される。
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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