抄録
自閉症児は, 他人とのコミュニケーションの障害を特徴としており, 治療時に患者の協力を必要とする歯科医療においては,解決困難な問題を有する情緒障害児である。本研究は,自閉症児の歯科受診態度を推定するためのスクリーニング法の確立を目的とし,自閉症児用行動評定(CLAC-II)と,歯科臨床における外部行動の評価との関係を検討した結果,次の結論を得た。
1)自閉症と診断された小児は, 全て歯科受診に対して非協力的ではなく, 約4 0 % は協力的であった。
2)歯科受診に対する協力性は,日常行動評価と歯科臨床における外部行動評価との関係から,CLAC-IIにより初診時に判断できることが示された。特に判断上必要な項目は,対人関係や表現活動,さらに行動の自律であった。
3)歯科受診時の外部行動とCLAC-IIから, 歯科受診協力性判定質問表を作製した。
4)自閉症児の保護者に対する歯科受診のための指導に際して,TK 式診断グラフ評価の結果から,保護,服従に対する育児姿勢への教育的配慮の必要性が示された。