小児歯科学雑誌
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齲蝕のない乳歯の歯肉膿瘍を契機として低リン血症性ビタミンD 抵抗性くる病と診断された1 例
山崎 博史大竹 幸美富沢 美恵子野田 忠鈴木 誠
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1985 年 23 巻 1 号 p. 204-214

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抄録

低リン血症性ビタミンD抵抗性くる病は,血清カルシウム値は正常であるにもかかわらず,血清リン値が低いという特徴を持つ疾患であり,通常のビタミンD治療量では症状の改善がみられないくる病である。著者らは,齲蝕のない乳歯の多くに歯肉膿瘍が生じたことを契機として,本疾患と診断された1例を経験した。
患児は1歳10ヵ月時に,齲蝕のない上顎両側乳中切歯および下顎左側乳中切歯部に歯肉膿瘍が生じた。1年2ヵ月後には下顎右側乳中切歯にも歯肉膿瘍が生じ,さらに6ヵ月後には上顎右側乳側切歯の菌肉にも膿瘍が形成された。患児のX線写真では顎骨の発育不良が疑われた。また,乳歯および永久歯の歯髄腔が著しく大きく,歯質の石灰化状態も低かった。これらの異常所見が認められたため,全身疾患の存在を疑い,新潟大学小児科に血清生化学的な精査を依頼したところ,患児は低リン血症性ビタミンD抵抗性くる病との確定診断をうけた。
本疾患では,くる病の臨床症状の現れていない罹患者にも歯肉膿瘍の生ずることが報告されており,本報告の症例のように歯科的症状が初発症状となりうる。患児の頭蓋および顎口腔領域における種々の観察を行い,それらの所見と本疾患の症状との関連性を考察し,さらに歯科対策について検討した。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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