小児歯科学雑誌
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歯根形成異常を示した埋伏下顎第1大臼歯の1症例
木沢 清清水 保
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1985 年 23 巻 1 号 p. 225-232

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抄録

著しい歯根の轡曲を伴った極めて稀な下顎第1大臼歯埋伏の1症例を経験したので報告する。患児は9歳10ヵ月の男子で,下顎第1大臼歯の埋伏を主訴として来院した。X線写真所見では,埋伏歯の歯根は近心根,遠心根とも著しく遠心に轡曲していた。また,埋伏歯の歯冠周囲の空隙の拡大が見られ,嚢胞形成が疑われた。開窓術を施した結果,正常な位置に萌出させることができ,咬合機能を僧ませることができた。
得られた資料からだけでは埋伏の原因を明確にすることはできなかったが,本症例の埋伏の原因としては濾胞性歯嚢胞が考えられた。本症例では開窓術のみの処置で埋伏歯を正常な位置へ萌出させることができたことから,歯根の轡曲は歯の萌出を阻害する因子とはなっていなかったと考えられる。本症例に見られた歯根の轡曲は,歯胚が顎骨の低位に埋伏していたために,歯根の形成が下顎骨下縁の皮質骨により変形させられたものと考えられたが,このような著しい歯根の轡曲を有する埋伏歯も,適切な時期に埋伏の原因を除去することにより,萌出を誘導することができることが明らかになった。

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