抄録
著者らは生後3ヵ月の幼犬を用いて,乳臼歯抜歯後の永久歯歯胚上部骨梁の変化を客観的に観察するために,X線写真の肉眼的観察とMicrophotographyによるX線不透過性の数量化を行なったところ,抜歯直後では近遠心根抜歯窩ともに上部から下部に行くに従ってX線不透過性が高くなっていた。
術後3日目になると近遠心根抜歯窩の濃度曲線は上昇し,歯槽骨の濃度曲線は高濃度域へ下降し,抜歯後初めて変化が認められた。術後7日目では近遠心根抜歯窩ともに濃度曲線は上昇し,とくに中部では高い濃度域にあって骨新生が最も旺盛な時期であることがうかがえた。術後10日目では近心根抜歯窩では上部と中部の濃度曲線は上昇傾向にあり,中部では傾斜が著明であったが,近心根抜歯窩下部と遠心根抜歯窩中部の濃度曲線は安定した。術後21日目では近遠心根抜歯窩ともに上部,中部の濃度曲線は下部と同じ低濃度域に近づき,歯槽骨の濃度曲線は皮質骨の濃度曲線の高さとの差を減少し,歯槽骨の反応性変化を示していた。術後35日目では近遠心根抜歯窩ともに低濃度域でほぼ安定し,歯槽骨の濃度曲線は近心側で上昇しているが,遠心側では正常に戻っていた。