小児歯科学雑誌
Online ISSN : 2186-5078
Print ISSN : 0583-1199
ISSN-L : 0583-1199
拘束歯科治療が小児の精神発達におよぼす影響-カラー・ピラミッド性格検査を用いた検討-
吉野 弘小椋 正
著者情報
ジャーナル フリー

1985 年 23 巻 2 号 p. 468-484

詳細
抄録
3歳から5歳までの患者43名とその母に,治療前後にカラー・ピラミッド性格検査を実施し,レストレイナーによる拘束歯科治療が,小児とその母にpsychic traumaの原因となるかどうかの深層心理を調査した。
その結果,歯科治療への適応度の低い小児は,外的刺激に対する子どもらしい未分化・無批判な受容傾向が低かった。これは,小児では,一般に適応力の低さを意味する。歯科治療への適応度の低い小児の母には,特定の性格特徴は見い嵐されなかった。
また,レストレイナーによる拘束は,適応度の低い小児だけに対して行われたが,そのような小児の外的刺激に対する受容の未分化・無批判な傾向を高めた。これは,小児では,一般に適応力の増大を意味する。一方,レストレイナーによる拘束はその母に,外的刺激に対する適度な選択的受容の傾向を高めた。これは,成人では,一般に適応力の増大を意味する。
以上の結果より,レストレイナーによる拘束歯科治療は,母子に対しpsychic traumaを与えず,むしろ,適応力を増大させることが示された。この点からは,レストレイナーの使用は奨励される。しかし,本研究でのレストレイナーの使用は,tell-show-do,説得hand-over-mouth等がすべて失敗した場合の最後の手段であったことは,留意すべきであろう。
著者関連情報
© 一般社団法人 日本小児歯科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top