抄録
半側性肥大症は稀な疾患であり,その成因は明らかでない。顔や四肢に特長がみられ,胎芽異常とも考えられている。
我々は,東京医科歯科大学小児歯科外来に来院した半側性肥大症の女児(初診時3歳8ヵ月)について6年間にわたる経年的な観察を行い,その歯科的所見ならびにレントゲン的所見の結果から,次のような興味ある知見を得た。
1.正中を境にして顔面の非対称が著しく,鼻および口唇の右側への彎曲が認められた。初診時より現在(昭和53年)にいたるまで変化は認められなかった。
2.初診時,舌は顔面の左側へ肥大,肥厚していた。乳頭は肥厚しており,正中線は右偏していた。
3.正貌頭部X線規格写真では,顎骨および軟組織とも初診時より現在(昭和53年)にいたるまで,常に肥大側の方が大きかった。
4.45度斜方頭部X線規格写真にて歯の形成量を測定したところ,肥大側の方が歯胚の形成において先んじていることがわかった。