小児歯科学雑誌
Online ISSN : 2186-5078
Print ISSN : 0583-1199
ISSN-L : 0583-1199
上顎両側犬歯が両側中・側切歯の歯根吸収を起こした症例とその治療
野口 元大森 郁朗
著者情報
ジャーナル フリー

1985 年 23 巻 2 号 p. 494-510

詳細
抄録
11歳女子が齲蝕治療を主訴として,鶴見大学歯学部附属病院小児歯科へ来院した。全身所見には,異常は認められなかった。オルソパントモおよび咬合型を含む全顎X線写真診査で,上顎両側犬歯の異常な萌出経路により,上顎両側中・側切歯の歯根吸収が認められた。これらの所見に加えて,側貌頭部X線規格写真分析で,骨格型の異常に基づく反対咬合が認められ,これらのことにより,切歯の歯根吸収も,歯と歯槽基底の不調和に伴なうものと考えられた。
本症例では,患児に対する心理学的配慮も重要であると考えられたため,治療は通常の齲蝕処置から開始した。上顎中切歯の抜歯は,上顎犬歯の萌出時期が近くなった時期に行った。上顎犬歯を中切歯の位置に萌出させた後,マルチブラケット装置を用いて排列矯正を行った。最終的に,良好な位置を獲得した両側犬歯に,中切歯形態のジャケット冠を装着した。患児は現在17歳10ヵ月である。これらの包括的な歯科治療により,機能的にも,審美的にも,満足する結果が得られた。
著者関連情報
© 一般社団法人 日本小児歯科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top