小児歯科学雑誌
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外傷を受けた乳歯に対するグラスファイバーを用いた固定治療
小口 春久飯塚 美酉及川 清
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1985 年 23 巻 2 号 p. 511-518

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抄録
乳歯の外傷は種々の原因によって生ずるが,そのうちで一番多いのが脱臼である。その治療方法としては先ず第1に,整復固定術を実施することが大切である症例が多い。外傷を受けた乳歯の整復固定方法については,種々報告されているが,患児の協力態度,乳歯の萌出状態や歯冠形態,更には操作上の問題などから臨床上,その適応に困難さを伴う場合が多かった。
今回,我々はグラスファイバーと矯正用オルソマイト・スーパーボンドを使用することによって,外傷歯に対する固定を試みた。患児は,乳歯の外傷を主訴として当科外来を受診してきた。受診時において,歯の脱臼と診断した結果,直ちに受傷歯を整復固定すべき症例であった。
本法は,脱臼した受傷歯を整復した後の固定処置の方法として極めて簡単である。技工室での技工操作を全く必要としないで,固定に要する時間は短い。また,治療上,患児に対する侵襲や負担も少なく,固定後においても,不快感異物感もほとんどみられない。更に口腔内の衛生管理も容易である。
グラスファイバーを用いたレジンスプリントは,強度が高く,破析,脱落するなどの合併症もほとんどみられない。予後も極めて良好であり,健全歯を固定源として,ほとんどの歯列に適応させることが可能である。グラスファイバーとオルソマイト・スーパーボンドを使用した固定法に必要とする器具も最小限である。それ故,救急歯科医療における特に脱臼を伴う外傷歯の治療上,極めて有効であることが明らかにされた。
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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