小児歯科学雑誌
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低フォスファターゼ症の歯科学的検索
山崎 勝之野坂 久美子高砂子 祐平鈴木 準
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1985 年 23 巻 3 号 p. 702-715

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抄録

低フォスファターゼ症は,全身的な骨形成不全症,血漿ならびに各種臓器組織中のalkarine phosphataseの活性値の低下,さらに尿中へのphosphoethanolamineの排泄を特徴としている。また,歯科学的には乳歯の早期脱落を特徴とし,時折これが主たる現症となっている。
今回著者らは,乳前歯の早期脱落と動揺を主訴として当科を受診し,その後本学小児科で低フォスファターゼ症と診断された2歳5カ月の女児の1例を経験した。初診時の全身の発育はやや遅く, 臨床検査でalkarine phosphatase の低下ならびにphosphoethanol-amineの尿中排泄を認めた。歯科学的にはAA/BAABCが脱落しており,残存歯には動揺がみられたが,C|/C|似外の周囲歯肉には発赤,腫脹は認められなかった。X線所見では全身的に異常は認められなかったが,歯槽骨の吸収,歯髄腔の大きな形状が認められた。
抜去歯及び脱落歯DCB/Cの4噛における組織学的検索では,象牙質で象牙細管の走向の乱れ,osteodentine などの異常が認められた。また, セメント質は, DB に認められたが,非常に非薄であった。他の部位にはセメント質は認められなかった。また,歯根膜線維は鬆粗で脆弱であった。このようなセメント質の部分的欠如ならびに非薄さ,歯根膜線維の脆弱さが乳歯の動揺,脱落の原因と考えられた。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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