小児歯科学雑誌
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下顎前歯部歯牙腫摘出後の経過観察
福田 理河田 典雄山内 哲哉横井 勝美黒須 一夫
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1985 年 23 巻 3 号 p. 745-752

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抄録

8 歳5 カ月男児の下顎左側前歯部に発生した集合性歯牙腫で, これに隣接する永久歯胚(|23)の位置異常を来した症例を,歯牙腫摘出後4年10カ月にわたり,その治癒過程と永久歯胚の動きを臨床的に観察した。
1)歯牙腫は|BC根尖相当部に存在し,X線診査では3-4個の歯牙様構造物としてみられた。
2)摘出物は小指頭大で大小多数の歯牙様構造物が付着あるいは内包された肉芽様物質と3個の歯牙様構造物であった。これらのソフテックスX線像により20数個の大小不揃いな歯牙様構造物が確認でき,エナメル質,象牙質,歯髄腔が認められた。
3)摘出後の患部の骨欠損は,X線的には術後8カ月でほぼ健側と同程度まで修復され,骨梁もはっきりと認められた。
4)歯牙腫によって著しく偏位した|2の歯胚は,歯牙腫摘出後4カ月で近遠心的位置が改善され,上下的位置は術後1年2カ月から1年6カ月で健側とほぼ同じ位置へ移動していた。
5)歯牙腫により位置異常を呈した永久歯は,萌出誘導処置を行うことなく正常な位置に萌出した。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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