抄録
昭和54年4月から昭和59年3月までの5年間に当科に来院した患者で,当科の治療システムのレールに乗った健常児716名(男児357名,女児359名)の初診時の年齢分布,齲蝕罹患状態,治療計画に従った治療内容等について集計分析したところ,次の結果を得た。
1)受診時の平均年齢は5歳1カ月で,3歳児が132名18.4%と最も大きな割合を占め,2歳から5歳児の占める割合は58.8%であった。
2)df歯率では,全ての歯種において昭和56年度歯科疾患実態調査値を上回った。特に罹患率が低いと言われている下顎乳前歯部においても,昭和56年度歯科疾患実態調査値の2~3倍の高率を示した。
3)第1大臼歯の齲蝕罹患率は隣接する乳臼歯と同様の罹患傾向を示した。
4)レジン修復,断髄処置は年々増加しているのに対し,アマルガム修復,インレー修復,乳歯冠,感染根管処置は反対に減少する傾向にあった。
5)年度別による乳歯の歯髄処置では昭和54年度は断髄処置が47.7%,感染根管処置は45.5%とほぼ同程度であったが,その後は断髄処置は経年的に増加する傾向を示し,感染根管処置は激減した。なお乳歯の断髄処置は大部分がFC法であった。