小児歯科学雑誌
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開窓療法を行った含歯性嚢胞3例の経過観察
棚瀬 精三堀口 浩蒲生 健司野原 義弘祖父江 英侍奥田 令以小泉 達哉生野 伸一藤居 明範高橋 雅子朝倉 恒夫
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1986 年 24 巻 3 号 p. 518-526

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抄録
若年者の顎嚢胞に対する処置は,PartschのI法の変法と考えられる開窓療法が有効であるといわれている。
今回,著者らは乳歯の根尖性歯周炎により永久歯胚のエナメル上皮に嚢胞化が起こって生じたと思われる6歳3カ月,7歳1カ月,7歳4カ月の小児の下顎小臼歯部に発現した含歯性嚢胞3例に対し,開窓療法を行った。
3例中2例には術後,創の閉鎖防止を兼ねた可撤式保隙装置を装着して経過観察を行った。その結果,開窓療法後10~14カ月目に嚢胞はほぼ消失した。嚢胞腔内埋伏歯の萌出は1例に頬側傾斜を認めたが,他の2例はほぼ正常に歯列内に萌出した。また,歯髄は3例とも生活反応を認めた。嚢胞腔内埋伏歯の歯冠部には褐色の変色や白斑が認められ,これは乳歯の根尖性歯周炎によるエナメル質形成不全症の他,創腔内不潔による脱灰とも考えられた。歯根には彎曲が認められ,嚢胞内圧によって歯根に障害が現われたものと考えられた。
3例の術後経過期間はそれぞれ8年1カ月,5年3カ月,1年2カ月であり,現在3例とも嚢胞は治癒し,再発傾向もみられず経過良好であるが,今後さらに慎重な経過観察が必要であると思われた。
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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