抄録
唾石症は歯科臨床においてしぼしば遭遇する疾患であるが,その多くは青壮年期に見られるのがほとんどで,幼小児に於ける唾石症は少ないようである。今回,我々は幼小児に於ける唾石症を4例経験し,その際得られた各唾石について走査型電顕による微細構造を観察した結果,以下の結論を得た。1.今回我々は6~8歳の幼小児の顎下腺導管内に,唾石を生じた四症例を経験した。2.唾石の走査電子顕微鏡による割断面の観察に於て,4症例の唾石の構造には相互に類似した所見が多数みられた。3.小児の唾石は,文献的に青壮年の唾石と類似した構造が多数見られた。4.小児の唾石の形成に菌様物の関与がうかがわれた。