小児歯科学雑誌
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ウシ永久歯歯胚の細胞培養に関する研究
特に歯小嚢におけるビタミンD3の影響について
浜田 三郎木本 茂成浜田 作光葉山 淑人丹下 貴司檜垣 旺夫川瀬 俊夫斉藤 滋
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1987 年 25 巻 2 号 p. 281-293

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抄録
歯胚の発生から萌出,さらに咀嚼へと歯の発育に関する研究は,小児歯科領域ばかりでなく歯科領域にとって近年,最も重要な課題の一つとして考えられている。特に,歯胚の中でも歯周組織を形成する歯小嚢に関する細胞生物学的手段による検索は必要と思われる。
本研究は,歯小嚢の構成細胞の特徴を生化学的に究明するための手初めとして,ウシ歯小嚢のinnerおよびouterから組織片を発育別に採取し,細胞培養を試みた。さらに,カルシウム調節ホルモンのビタミンD3の細胞増殖効果についての検討を加えた。その結果,1)組織片からのoutgrowthにより細胞培養が可能であり,発育段階の初期のものほど,また初期ではinnerが,歯根形成時ではouterにおいて細胞の増殖率が高かった。
2)outgrowthした細胞の形態は,細胞集団としては極めてヘテロであるが,培養日数につれ線維芽細胞が主体となった。
3)さらに,これらの細胞を継代しても形態的変化は認められなかった。
4)5×10-9M 1,25(OH)2D3により,各発育時期を通じ,inner,outer双方とも細胞増殖は抑制されたが,stage I ではinner,stage II およびIIIではouterで強い抑制効果が認められた。一方,5×10-8M 24,25(OH)2D3では抑制効果は認められなかった。
従って,歯胚発育,なかでも歯周組織を形成する細胞群の発育に伴っての特徴をとらえられる細胞培養が可能となった。
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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