小児歯科学雑誌
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歯胚の生化学的研究
特に歯小嚢のアルカリフォスファターゼについて
浜田 三郎
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1987 年 25 巻 2 号 p. 294-305

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抄録
歯胚において,細胞の生化学的特徴を明らかにすることは歯胚の発育過程を知る上で重要と考えられる。そこで,ウシ歯小嚢および歯乳頭から得られた細胞のアルカリフォスファターゼ(ALPase)活性を指標としてその特徴について検索した。
約2歳のウシ下顎前歯永久歯歯胚を3つのstageに分け,それぞれ歯小嚢と歯乳頭を採取し,37℃90分間のコラゲナーゼ処理を行った。遊離細胞に対しALPase活性の測定を行い,さらに反応速度論的解析,熱および阻害剤による効果について検索し以下の結果を得た。ただし,1 Unit は 50 nmole p-nitrophenol生成/15min/1×105 cellsとした。
歯小嚢由来の細胞は高いALPase活性を示し,しかも歯胚のstageとともにI=44.3±1.9 Units,II=59.0±3.2 Units およびIII=67.6±4.9 Units と上昇した。一方,歯乳頭では各時期を通じ I=38,0±7.9 Units,II=38.8±11.4 Units およびIII=43.6±6.8Unitsと一定であった。Km値(pH10.15)は,歯小嚢においてIで2.86mM,IIおよびIIIで1.18mMであったが,歯乳頭ではstageを通じ2.00mMと一定であった。さらに,熱(56℃ 20分)およびL-HArgに対し顕著に阻害され,L-PheおよびL-Phe-Gly-Glyでは阻害効果は弱かった。したがって,ALPaseは歯胚の発育にとって興味あるmarker enzymeとなりうることが明らかとなった。
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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