小児歯科学雑誌
Online ISSN : 2186-5078
Print ISSN : 0583-1199
ISSN-L : 0583-1199
ヒト顎舌下腺唾液中のヒドロキシアパタイト親和性塩基性高ヒスチジンタンパク質の分離精製
三條 治
著者情報
ジャーナル フリー

1987 年 25 巻 2 号 p. 332-344

詳細
抄録
唾液タンパク質の中には,ヒドロキシアパタイトに高い親和性をもつ成分が存在し,獲得被膜の形成,特にその初期過程に関与し,歯石の沈着,齲蝕の発生に関わっている可能性が高いと考えられる。そこでヒドロキシアパタイトに対して高い親和性をもつタンパク質成分を分離する目的でヒドロキシアパタイトカラムクロマトグラフィーにより顎舌下腺唾液タソパク質を分離し,これをCM-セルロースカラムクロマトグラフィーによって精製し,その生化学的性質,ならびにリン酸カルシウムの沈澱形成に及ぼす影響,唾液中の濃度の個体差と齲蝕罹患率との関係について調べ,次のような結果を得た。
1.顎舌下腺唾液タンパク質のうちヒドロキシアパタイトにもっとも親和性の高い成分として3種の塩基性高ヒスチジンタンパク質分画を分離,CM-セルロースカラムクロマトグラフィーによりそのうちの主な2成分を精製することが出来た。これらのタンパク質は,その生化学的性質から獲得被膜の形成,とくにその初期過程に関与していると考えられた。
2.今回分離した塩基性高ヒスチジンタンパク質は,過飽和な溶液からのリン酸カリシウム塩の沈澱形成を促進することから,歯石の形成に関わっている可能性が考えられる。
3.28名の成人女性について調べたところ,DMFT指数と顎舌下腺唾液中の塩基性高ヒスチジンタンパク質濃度の間には相関は認められなかった。
著者関連情報
© 一般社団法人 日本小児歯科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top