小児歯科学雑誌
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Tooth tapping時における小児咀嚼筋筋活動ならびに咬合音に関する研究
山口 和史
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キーワード: 筋電図, 咀嚼筋, 咬合音
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1987 年 25 巻 3 号 p. 554-581

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抄録
Tooth tapping時の小児咀嚼筋筋活動と咬合音持続時間について分析し,咬合異常あるいは機能回復のための機能的検査法としての可能性の有無について検討する目的で本研究を行った。
まず健全乳歯列群小児15名,混合歯列群小児13名,永久歯列群成人15名での3群間の比較検討を行い,さらに乳歯列期小児5名に実験的咬合干渉を付与した時の筋活動と咬合音持続時間に及ぼす影響について検討を行った。臨床的には乳歯齲蝕治療の終末処置としての既製乳歯冠装着前後での変化について乳歯列期小児4名を対象に比較検討を行った。
その結果,3群間の比較ではDPTCは乳歯列群が最も長く,DOTCとTotal burstdurationは混合歯列群が最も長かった。APTCは側頭筋で乳歯列群が永久歯列群より有意に大きかったが,咬筋では差は認めなかった。AOTCとTotal burst activityは各筋で混合歯列群が大きな値を示していた。咬合音持続時間は乳歯列群が最も短く,混合歯列群が最も長かった。咬合干渉による影響では,干渉直後にDPTCは干渉側の側頭筋,咬筋で延長する傾向を認め,DOTCは全ての筋群で延長する傾向にあった。Total burstdurationは干渉側で延長する傾向を認めた。積分値では一定の傾向を認めなかった。咬合音持続時間は干渉後3日目に短縮する傾向を認めた。既製乳歯冠装着後では,Total burstdurationが健全乳歯列群の値に近いものとなった。咬合音持続時間は3名で延長する傾向を認めた。
以上のことより,tooth tapping時の咀嚼筋筋活動および咬合音持続時間を検討することは,小児の咬合状態の機能的検査法の一手段として臨床応用の可能性のあることが示唆された。
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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