小児歯科学雑誌
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心身障害児の口腔機能・発育ならびに口腔衛生管理に関する基礎的研究
第2報:脳性麻痺児の口腔内所見-歯の萌出,歯列・咬合について-
鈴木 康生本間 まゆみ山下 登井上 美津子向井 美恵佐々 竜二金子 芳洋宍倉 潤子金子 兵庫鈴木 康之
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1987 年 25 巻 3 号 p. 582-607

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抄録
心身障害児とくに脳性麻痺児の口腔領域の諸問題を総合的に把握する目的から,3施設(肢体不自由児および重症心身障害児施設)の243名について調査した。今回は第2報として,口腔内診査,X線診査から歯の発育,萌出状態ならびに歯列・咬合状態について分析し,あわせて口腔機能障害度との関連についても検討した。
1)歯の萌出状況は,乳歯では第2乳臼歯の遅れが,また永久歯では切歯よりも第一大臼歯,小臼歯の遅れを認めた。
2)萌出と口腔機能障害度との関連では,乳歯列期で萌出歯数が標準より少ない者はいずれも障害を有する者であった。永久歯では,障害が重度の者ほど歯数が少ない傾向にあり,これは乳歯残存状態とも関連して永久歯交換が適切に行われていないことが明らかとなった。
3)X線による観察では混合歯列期以降,歯年齢が高くなるにしたがい,歯の埋伏,転位といった位置異常の出現頻度が増す傾向にあった。
4)歯列・咬合状態では,乳歯列期ですでに30%の小児に開咬を主とした咬合の異常を認めた。混合歯列期以降では, 開咬, 上顎前突, 歯列狭窄などが20~50 % の出現率を示した。口腔機能障害度との関連では乳歯列期では障害の重度の者に,また混合歯列期以降とくに永久歯列期では障害の程度とは関係なく出現率が増す傾向にあった。
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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