小児歯科学雑誌
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齲蝕進行抑制剤としてのフッ化モリブデン酸アンモニウムの臨床効果
谷 京子楽木 正実大土 努祖父江 鎮雄
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1987 年 25 巻 3 号 p. 644-649

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抄録

ラットを用いた動物実験により,フッ化モリブデン酸アンモニウム溶液の齲蝕進行抑制効果が報告されている。ヒトの齲蝕に対するフッ化モリブデン酸アンモニウム溶液の局所塗布の効果を, 10名(14症例)の小児を対象として調べ, 以下の結果を得た。
1)齲蝕病巣の程度,擦過痛の有無,齲蝕病巣の硬さについてチェアーサイドで判定した結果, フッ化モリブデン酸アンモニウム溶液の塗布により, 蒸留水塗布に比べてC1, C2程度の齲蝕の進行が抑制される傾向が認められた。
2)スライド写真により齲蝕病巣の表面の面積の経時的変化を測定した結果, フッ化モリブデン酸アンモニウムの齲蝕進行抑制作用が,実質欠損を伴わないC0の齲蝕でも,実質欠損を伴うC1, C2の齲蝕でも, 統計的に有意に認められた。
以上の結果より, フッ化モリブデン酸アンモニウムは歯質を着色しない齲蝕進行抑制剤として,臨床応用が可能であると考えられた。

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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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