小児歯科学雑誌
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小児における永久埋伏偏位歯の研究
第1報: 嚢胞腔内の位置異常歯の萌出誘導について
片尾 秀信小川 公子奥村 喜与子斉藤 武公森谷 泰之稗田 豊治黒住 俊明白数 力也
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キーワード: 埋伏偏位歯, 嚢胞, 萌出誘導
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1987 年 25 巻 3 号 p. 635-643

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抄録
含歯性嚢胞の治療は,主に原因歯の抜去とともに嚢胞全摘出および嚢胞開窓術が行われている。私たちは,今日まで嚢胞開窓術による関連埋伏歯の萌出誘導を数多く経験しているが,今回は,とくに嚢胞が大きく,嚢胞の圧迫によって関連埋伏歯の位置異常の著しい3症例について開窓術と保隙装置による萌出誘導を行い,良好な結果を得たので報告する。
1)年少者の広汎性の含歯性嚢胞において開窓術が有効であった。
2)開窓部の閉鎖を防止するために嚢胞壁と歯肉粘膜とを縫合すると好結果が得られた。
3)圧迫偏位した関連埋伏歯は,開窓後ただちに萌出する傾向が認められた。
4)開窓前には,著しい歯軸の傾斜が認められる関連埋伏歯も,開窓後,矯正力を加えなくてもその歯は正常な歯軸に戻る傾向が認められた。
5)すでに萌出している隣接歯の傾斜防止と,関連埋伏歯の萌出に必要なスペースの確保が必要で,そのためには開窓術に加え,保隙装置の併用が必要と考えられた。
以上,若年者の含歯性嚢胞には開窓術と保隙装置を併用することによって,歯の牽引等の矯正力を加えなくても,関連埋伏歯の正常な位置への誘導が可能であると考えられ,たとえ,含歯性嚢胞に関連する埋伏歯の位置異常が著しくても,安易な抜歯は避けるべきと考えられる。
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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