小児歯科学雑誌
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エナメル質の成熟過程に関する研究
第一報 各成熟段階の牛歯エナメル質粉末を用いて
大土 努斉藤 隆裕楽木 正実祖父江 鎮雄
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1987 年 25 巻 4 号 p. 822-829

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抄録
エナメル質の萌出後成熟を検討する前段階として,エナメル質の成熟過程全般を知る目的で牛歯エナメル質粉末を用い,代表的無機質成分(Ca・P・CO3・F)の変化とそれに伴う結晶性の変化および有機質成分の間の相互関係を検討した。その結果,
1)歯冠形成期には,エナメル質のCaおよびPの含有量は大きく増加し,それと対応してCO3,Fおよび有機質成分の含有量は大きく減少した。またハイドロキシアパタイトの結晶成長がa軸方向に認められたが,この段階ですでにc軸方向の結晶成長はほぼ完了していると思われた。
2)歯根形成期の初期でも,CaおよびPの含有量は増加するが,その増加量は歯冠形成期に比べて小さく, CO3 とF の含有量の減少本認められたくなった。しかしハイドロキシアパタイトのa軸方向の結晶成長と有機質成分の含有量の減少は,歯冠形成期と同様の割合で認められた。
3)歯根形成期の後半になると,各成分の含有量の変化やハイドロキシアパタイトの結晶成長はほとんど認められなくなった。
4)しかし萌出期には,もう一度CaとPの含有量の増加およびCO3と有機質成分の含有量の減少が,歯冠形成期に比べて程度は小さいが認められた。以上の研究結果は,萌出後成熟について多くの示唆を与えるものである。
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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