乳歯列から永久歯列へ推移する際に咬合形態に影響をおよぼす因子をさぐる目的で,正常な乳歯列が不正咬合の永久歯列へ推移したものについて,フーリエ解析を用いて歯列弓,歯槽基底弓の形態について検討を行い,第一報の正常咬合の結果と比較した.
資料は第一報の資料に加え,正常咬合の乳歯列が永久歯列で不正咬合となった男児5名,女児3名,計8名の経年歯列石膏模型を用いた.その結果,以下の結論を得た.
1)歯列弓,歯槽基底弓の形態の個体差においては,不正咬合群では乳歯列期の歯列弓の形態においてばらつきが多く,正常咬合群に比べ個体差が認められた.
2)乳歯列と永久歯列との関連性については,不正咬合群では正常咬合群に比べ乳歯列から永久歯列にかけて,上下顎とも歯槽基底弓の大きさに変化がみられなかった.
3)乳歯列期での歯列弓,歯槽基底弓の形態の比較においては,不正咬合群では上顎歯槽基底弓の大きさが小さく,特に前方部で著明であった.
4)以上のことより,不正咬合の永久歯列へ推移する乳歯列では,上顎歯槽基底弓の形態が重要な因子のひとつとなっていると思われた.