抄録
昭和54年4月から昭和61年10月までの7年7カ月の間に, 本学歯学部附属病院小児歯科外来を受診した心身障害児を対象として歯科疾患の罹患状況および治療成績を調査した.
対象としては,上原の分類によるIV群,V群,VI群およびVII群の疾患を有する患児341名(男199名,女142名)について検討した.
疾患別患者数は,心臓疾患が154例と最も多く,ついで全身疾患99例,血液疾患46例,言語障害42例であった.初診時の年齢は2~6歳までが全体の65%を占めていた.初診時の主訴は, 齲蝕処置が313例で全体の91.8%を占めており, その多くは本学医学部附属病院からの紹介患者であった.
疾患別齲蝕罹患状況では,各疾患別に健常児と比較した結果,何れの疾患においても齲蝕罹患状態は極めて高く,齲蝕治療を受けないままに放置されているものが多かった.
乳歯の治療内容では,修復処置を受けたものが最も多く41.2%を占め,続いて歯髄および根管処置,抜歯,予防処置であった.永久歯の治療内容では,修復処置39.4%,ついで予防処置,歯髄および根管処置,抜歯の順であった.
定期診査時の齲蝕発症については,再処置歯率に比べて,新生齲蝕歯率が有意に高かった.