小児歯科学雑誌
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エナメル質の成熟過程に関する研究
第二報 各種形成段階の牛歯薄切切片を用いて
大土 努斉藤 隆裕楽木 正実祖父江 鎮雄
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1988 年 26 巻 1 号 p. 170-179

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抄録
歯冠の形成から萌出に至る牛歯エナメル質の成熟過程を,エナメル質の表層から内層に向かう変化,および切端側から歯頸側への変化を考慮して評価した.そのため各種形成段階にある牛歯薄切切片を用い,石灰化度の変化を顕微X線写真法で,Ca,P,MgおよびClの含有量の変化と分布をX線マイクロアナライザーで分析した.その結果:
1)歯冠が1/2程度形成されてから完成までの間に,CaおよびPの含有量は萌出歯の約半分量から増加し,萌出歯の80%以上の量となった.しかし石灰化度は萌出歯の1%以下であった.またMgおよびClの含有量はゆるやかに増加した.
2)歯根形成期ではその初期で,すでにCaおよびPの含有量は萌出歯と同程度となった.石灰化度はこの時期においても上昇するが程度はごく僅かであった.MgおよびClの含有量の増加は歯冠形成期と同様に続いた.
3)歯根形成期の後半では,CaおよびPの含有量に変化はないが,石灰化度は大きく上昇し,表層より内層のほうが石灰化度は高かった.Mgの含有量は表層から60μmで著明に増加するが,それより内層での増加はゆるやかであった.Clの含有量の上昇は続いて観察された.
4)萌出期にもCa,PおよびMgの含有量に変化はみられなかった.しかし石灰化度の上昇は続き,萌出の前後でも差が認められた.Clの含有量は内層が上昇することにより,全層でほぼ一定となった.
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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