抄録
口腔領域において, 外的刺激による線維性過形成病変はしばしば遭遇するものであるが乳幼児期における報告は数少ない.
著者らは,2歳8カ月女児の上顎左側乳中切歯口蓋側歯頸部に腫瘤を生じ,病理組織検査の結果,線維性過形成と診断された1例を経験したので報告する.本症例の腫瘤には,多数の上皮島が観察され,一剖には,石灰化物を含むものもあり,上皮島の由来について検索するため,連続切片により観察を行った.その結果,被覆上皮との明らかな連続性は認められなかったが, 深部歯胚組織との関連はなく, 上皮島の形態から, 口腔粘膜上皮由来と考えられた.