抄録
各種の床型の咬合誘導装置には, 即時重合レジンを用いることが多いが, 不馴れな小児が取り扱うため,また,レジンの強度も弱いため,よく破折等のトラブルを起こす.そこで,即時重合レジンにグラスファイバーシートを埋入することにより,補強できるのではないかと考え,JIS規格T6501に準じた抗折たわみ試験,ならびにJIS規格K7113に準じた引張試験を行った.
その結果, 即時重合レジンのみでは,JIS T6501「義歯床用アクリリック樹脂」の抗折たわみ試験の基準に達していなかったが,即時重合レジンにグラスファイバーシートを埋入することにより,たわみ量は減少した.特に, 試験片全体にグラスファイバーシート1枚と荷重のかかる中心部に短いシートを入れたものと,試験片全体にグラスファイバーシート2枚を入れたもののたわみ量は,JIS規格を満足していた.さらに, 即時重合レジンにグラスファイバーシートを埋入することにより,引張破壊強さは増し,引張破壊伸びは減少し,引張弾性率は増し,引張耐力も増していた.特に引張耐力は,グラスファイバーシートを埋入することにより改善が著しく,その値はファイバーの量に比例する傾向が認められた.