小児歯科学雑誌
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小児におけるガム咀嚼時の顎運動パターンについて
篠田 圭司
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1988 年 26 巻 2 号 p. 371-390

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抄録
乳歯列期からの歯列の成長に伴う顎運動の変化,さらに小児期(混合歯列期)の不正咬合が顎運動に対してどのような影響を及ぼしているかについて検討を行った.
被検者は乳歯列期,混合歯列期,永久歯列期の個性正常咬合を有する小児それぞれ10名と不正咬合群として混合歯列期の交叉咬合小児1 0 名, 下顎前突小児10名づつを用いてチューインガム咀嚼時の顎運動パターンについて比較検討を行った.
1)下顎の各計測体における移動量について最下方点垂直移動量(最大開口量)を100とした比率で表した結果,最下方点および作業側側方位の水平移動比は乳歯列群,混合歯列群,永久歯列群の順に大きく,逆に咀嚼幅は乳歯列群で最も小さかった.すなわち乳歯列群の側方へ偏位した咀嚼幅の狭いパターンから,歯列の成長に伴って次第に正中に沿った咀嚼幅の広いパターンを示す傾向が認められた.
2)乳歯列群での咀嚼タイプはチョッピングを示し,一方,混合歯列群および永久歯列群ではグラインディングを示すのがが特徴的であった.
3)交叉咬合群,下顎前突群はともに正常咬合群に比べ,作業側側方位の水平移動比が小さく,正中に沿った咀嚼幅の狭い咀嚼パターンを示した.
4)不正咬合者における逆サイクルの出現率は習慣側,非習慣側ともに下顎前突群が高い値を認めた.以上より,乳歯列期から永久歯列期へと顎運動パターンが変化することが認められた.さらに不正咬合が顎運動に影響を及ぼしていることも明らかとなった.
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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