小児歯科学雑誌
Online ISSN : 2186-5078
Print ISSN : 0583-1199
ISSN-L : 0583-1199
下顎第一乳臼歯歯冠外形と歯髄腔との関係
立体構築による三次元的解析
野坂 久美子伊藤 雅子小野 玲子熊谷 恵津子甘利 英一
著者情報
ジャーナル フリー

1988 年 26 巻 3 号 p. 470-490

詳細
抄録
下顎第一乳臼歯42歯を用い,髄室から歯冠表而までの距離を測定した.研究方法は,上顎乳臼歯と同様,連続切片にした歯を再構築後,任意の面で切断することで,三次元的に観察した.それぞれの観察部位は,咬合面観,頬舌側而観,近遠心面観ならびに連合隆線中央部と中央窩での切断面である.
結果:頬舌側面観における髄室角から咬合面までの距離は,近心頬側髄室角と遠心舌側髄室角のI型が2.4mmで最小値であった.しかし,髄室角の切断而では,遠心舌側髄室角がさらに小さく,2.0mmであった.頬舌側溝ならびにトリゴニッド切痕から髄室までの距離は頬側溝が最も大きく,3.0mmであった.髄室から歯冠外周までの距離について,髄室角の最小値は,舌側而観の近心髄室最突出部から近心側までと,髄室角の切断而で近心舌側髄室角から舌側までの2,1mmであった.髄室最大豊隆部では,近心頬側隅角都を除いた部位が約1.7mmで小さかった.髄室最陥凹部と歯頸部での最小距離は約1.4mmであった.中央窩から髄室までの距離は2.4mmと小さく,連合隆線部での距離は2.8mmであるが, この付近の中央髄室最突出部は, 咬合面により突出していた.咬頭頂に対して最も接近している髄室角は,近心舌側髄室角であり,遠心舌側髄室角が最も内方にあった.歯根の吸収段階では,髄室から咬合面までの距離が,とくにI型の近心頬舌側髄室角部で小さいため,窩洞形成には十分な注意が必要と思われた.
著者関連情報
© 一般社団法人 日本小児歯科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top