抄録
小児の顎骨の成長発育において,骨吸収,乳歯歯根吸収,骨形成,永久歯石灰化をそれぞれ独立してみることはできない。形成と吸収のバランスで正常な小児の顎骨の形成を維持する骨組織と乳歯および永久歯を構成している全細胞が密接な関連を必要としている。われわれはヒト抜去乳歯を用いて,乳歯歯根吸収面の微細構造観察に走査電子顕微鏡を用いた。乳歯歯根象牙質吸収窩は大小の皿状吸収小窩を呈し,その吸収小窩には,象牙細管の突起が認められた。線維性結合組織で支持され,被覆された円形の破歯細胞が観察され,さらに線維性組織を除去,洗浄すると,小窩内には石灰化したコラーゲン線維様の基質線維が配列をしていた。セメント質吸収面は皿状吸収小窩で,規則的に走行する線維性結合組織で被われており,円形又は楕円形の破歯細胞周囲には太い血管様結合組織が集まっていた。吸収小窩のX線元素分析では象牙質吸収小窩でP・Caが多く分析され,他にAl,Mg・Na・Znが検出された。破歯細胞ではS・P・Ca・Znが検出された。セメント質吸収小窩ではCa・P・Mg・Na・Znが分析された。