小児歯科学雑誌
Online ISSN : 2186-5078
Print ISSN : 0583-1199
ISSN-L : 0583-1199
下顎孔の位置に関する研究
逢坂 亘彦
著者情報
キーワード: 下顎孔
ジャーナル フリー

1989 年 27 巻 1 号 p. 9-20

詳細
抄録

乳歯咬合完成前期から第三大臼歯萌出完了期のインド人頭骨140体を石膏で複製し,レーザー光線を利用した計測装置と,3方向より撮影した写真上で下顎孔の位置を計測し以下の結果を得た。
なお,下顎孔の位置は先人の方法に準じ下顎小舌尖端とした。
下顎小舌角度は加齢的にやや減少するが,小児では約45°となる。
咬合平面と下顎小舌尖端との関係は咬合平面より高いものが多い。
下顎枝高径は加齢的に成長し増加量は計測項目中最大となる。
下顎枝幅径は加齢に伴いゆるやかな増加をとげ,ほぼ下顎枝高径と似た成長をする。また前,後下顎小舌距離も加齢的にゆるやかに増加し下顎枝幅径と並行して成長する。
下顎小舌高径は加齢的に徐々に増加し下顎枝高径と似た成長をする。
最後臼歯遠心面からの距離は大臼歯の萌出にともない減少する。
下顎枝高径に対する下顎小舌高径の割合は各時期とも約44となり,下顎枝幅径に対する後下顎小舌距離の割合は加齢的に前方に移動する。
以上のことを臨床に応用すれば,小児の下顎孔の伝達麻酔は,反対側乳犬歯と第一乳臼歯の間に注射器をおき咬合平面に対し約10°の角度をもち,正中線に対し約45°の方向で下顎枝の高さの1/2,幅の1/2のところに有る下顎小舌尖端を目標に最後大臼歯遠心面から20-30mm針を進めれば,安全かつ確実に麻酔効果が得られると考える。

著者関連情報
© 一般社団法人 日本小児歯科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top