小児歯科学雑誌
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培養新生仔ハムスター歯胚の発育におよぼすヨードホルムの作用
鈴木 克政
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1989 年 27 巻 1 号 p. 120-136

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抄録
ヨードホルムは創傷,潰傷の殺菌,消毒のために使用されるが,本剤を主成分とするヨードホルム系根管充填剤を乳歯根管充填として適用した場合,その病理組織学的所見では,適用周囲に壊死層が形成され,強い炎症反応を示すことが報告されている。本研究は,この点を考慮し,ハムスター臼歯歯胚を用い,器官培養ならびに生体内培養を行い,歯胚の発育に及ぼすヨードホルムの影響について,検索したものである。まず,生後2日目のシリアン・ハムスター下顎第二臼歯歯胚を摘出し,Trowll型改変チャンバー内でGrid法を用いて器官培養を行った。24時間後にヨードホルム(1.0, 3.3, 6.6, 10.0μg/ml)を含む培養液に交換し,さらに48時間培養を続けた。この時,歯胚の組織に,濃度に応じた障害が観察された。さらに,器官培養後の歯胚を,同系交配雌ハムスターの頬袋内に移植し,生体内培養を3週間行った。この時,対照群で90%の歯胚が発育を示したが,ヨードホルム濃度に応じて生存率が低下した。また,作用群で形成された歯牙の歯冠部に厚い不整象牙質層が観察されたが,その歯根部象牙質はほぼ正常であった。この事は,ヨードホルムによって障害を受けた歯胚組織が,その障害が少ない時には回復する傾向を有し,一定期間後に正常な象牙質を形成し得ることを示唆している。
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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