抄録
この研究の目的は,思春期における顎関節症の原因となる咀嚼筋機能ならびに咬合機能の役割を明らかにすることである。
著者らは,咀嚼筋ならびに咬合機能と顎関節症症状との関係を咬合接触面数,咬合干渉,歯列模型,そして咀嚼筋筋電図を使用し検討した。特に,咀嚼筋筋電図は,初診時と咬合調整後の比較により検討した。
対象者は,顎関節症にて来院した外来患者39名である。
次のような結果が得られた
1)顎関節症患者における咬合接触面数は,対照とした正常群より少なかった。
2)非作業側における咬合干渉と顎関節症症状の疼痛との関係において,全ての対象者の76.9%が疼痛の発症と咬合干渉との因果関係を認めていた。
3)筋電図の積分を使用した分析により,咬合調整後の側頭筋における総活動電位は,減少する傾向を示した一方,咬筋の割合が増加する傾向が示された。
)咬筋から得られたガム自由咀嚼リズムの比較検討から,咬合調整後のパターンは,初診時よりもより安定していた。
5)咬合調整後のsilent periodの発現頻度は,初診時より少なかった。silent perioddurationの変化と顎関節症状とで関係があることが示された。