小児歯科学雑誌
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上顎犬歯の異所萌出により中・側切歯に高度な歯根吸収を起こした症例および上顎犬歯が中切歯部に存在する症例
原田 桂子有田 憲司西野 瑞穂
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1989 年 27 巻 3 号 p. 692-699

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抄録
1 2 歳4 カ月の女子において, 上顎左側犬歯の異所萌出により同側の中・側切歯の歯根がほとんど全て吸収された症例,および27歳女子において,上顎左側犬歯が同側中切歯の位置に萌出していた症例について,観察ならびに治療を行った。得られた所見ならびに治療法は次のとおりであった。
1.犬歯の異所萌出による中・側切歯の歯根吸収は,極めて高度であり,歯根がほとんど吸収されていた。舌側では一部エナメル質にまで吸収が及んでいた。
2.保存不可能な中・側切歯を抜歯した。その後,乳犬歯の歯根は全く吸収を受けておらず,永久犬歯の根尖が側切歯相当部に位置していたので,犬歯を側切歯部に誘導した。
3.上顎左側犬歯が同側中切歯部に萌出していた症例では,機能的問題は認められず,患者が歯冠を中切歯の形態に修正することを望まなかったので,とくに治療は行わなかった。
4.2症例とも乳犬歯が残存しており,永久犬歯が異所萌出した主原因は,萌出余地不足ではなく,犬歯の歯胚の位置異常や萌出方向の異常によるものと推測された。以上の観察,治療とあわせて,上顎犬歯の異所萌出による切歯の歯根吸収は重篤な問題を引き起こすので,これを予防するための方法について文献検索を行った結果,10歳頃には必ず口腔内の触診を行い,犬歯萌出相当部に犬歯を触れることが出来なければ,X線精査により犬歯の位置と萌出方向について,早期に診断し,適切な処置を施すことが大切であることが示唆された。
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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