小児歯科学雑誌
Online ISSN : 2186-5078
Print ISSN : 0583-1199
ISSN-L : 0583-1199
周生期障害によるエナメル質減形成を有する乳歯の組織学的観察
井出 正道松本 恵美大森 郁朗
著者情報
ジャーナル フリー

1989 年 27 巻 4 号 p. 864-875

詳細
抄録
本研究は,周生期障害に起因する脳性麻痺児から得られたエナメル質減形成を有する乳歯について,エナメル質減形成の部位と新産線の歯表面に至る部位との関連ならびに組織構造を明らかにすることを目的としたものである。観察した資料は2名の脳性麻痺児からそれぞれ1歯ずつ得られたB(以下Bと略す)およびC(以下Cと略す)である。これらの歯について,形態観察,実体顕微鏡観察,SEM観察,光顕的観察,マイクロラジオグラム観察を行い,以下の結果を得た。
1.2歯とも歯冠の大きさは平均値と比較して小さかったが,歯冠形態には異常は認められなかった。
2.実体顕微鏡観察によると,周生期障害に起因するエナメル質減形成は,Bでは唇側面に広範囲に認められ,舌側面は軽度であった。Cでは唇側面切縁部に限局して認められた。
3 . SEM 観察によると, エナメル質減形成部の表面性状はB ・C ともに粗造であった。
4.光顕的観察によると,2歯とも新産線の位置はエナメル質減形成部の内側に一致しており,減形成を生じたエナメル質は出生直後に形成されたエナメル質であった。
5.マイクロラジオグラム観察によると,新産線はX線透過像として認められ,その周囲のエナメル質には石灰化不良の像は認められなかった。
6.組織学的観察により,周生期障害と歯の発育障害の関連が明らかにされ,これらの脳性麻痺児の障害の発症時期は周生期であることが立証された。
著者関連情報
© 一般社団法人 日本小児歯科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top