抄録
齲蝕感受性の高い小窩裂溝部の予防填塞は従来より, 酸処理法を前処理とするレジンシーラントが広く応用され,その齲蝕予防効果も一応評価されてきている.しかし,反面,酸処理操作上填塞範囲を越えて余剰な酸処理となることは避け難く,エナメル質表層の質的性状および萌出後成熟に影響を及ぼす可能性が考えられる.本実験ではこの様な観点から特に酸処理を必要とせず,フッ素イオンを溶出するといわれるグラスアイナノマーセメント系シーラントにより,填塞された小窩裂溝部エナメル質の質的性状変化について検討し,以下の結果を得た.
1)本シーラント填塞下部,周囲部エナメル質ともに,シーラントより溶出するフッ素イオンの浸透を約20~30μmの深さまで認めた.
2)本シーラント填塞下部,周囲部エナメル質ともに,耐酸性の向上が認められたが,この傾向はシーラント周囲部エナメル質により著明に認められた.
3)本シーラント填寒下部エナメル質表層の結晶性は,c軸方向には低下する傾向がみられたが.a軸方向にはやや向上の傾向がみられた.シーラント周囲部エナメル質表層の結晶性は,a軸,c軸方向ともに向上する傾向がみられた.以上のことより, グラスアイオノマーセメント系シーラントはシーラント填塞下部および周囲部エナメル質の歯質強化をもたらすことが示唆された.