抄録
下顎前歯部および小臼歯部に発症した集合性歯牙腫の3症例について,その硬組織のCa/P比測定と脱灰象牙質のアミノ酸分析をおこない,その結果を永久歯と乳歯を対照として比較検討した.その結果,硬組織脱灰液中のCa/Pモル比は乳歯,永久歯,歯牙腫をとわずエナメル質で1.67~1.68,象牙質で1.65~1.69とほぼ一致していた.象牙質のアミノ酸分析では,永久歯,乳歯と比較して歯牙腫で数種のアミノ酸の増加または減少がみられた.更にリジン残基とハイドロキシリジン残基の総和に対するハイドロキシリジン残基の割合(リジン水酸化率)を比較すると,乳歯のそれは,永久歯よりも低値を示し,歯牙腫の値は, 乳歯の値よりも更に低い値を示した.永久歯と比較して歯牙腫でのリジンの水酸化率は,t検定により有意に低下していた.しかし,乳歯と歯牙腫との間には,有意差は無かった.また,プロリン残基とハイドロキシプロリン残基の総和に対するハイドロキシプロリン残基の割合(プロリン水酸化率) は, 歯牙腫が永久歯または乳歯の値に比較して低値を示し,歯牙腫の値は乳歯の値よりt検定により有意に低下していた.