小児歯科学雑誌
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エナメル質形成不全歯における病理組織学的検討
長坂 信夫信家 弘士石通 宏行市川 史子三浦 一生
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1990 年 28 巻 2 号 p. 486-492

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抄録
我々は,歯牙硬組織の発育障害の予防,処置および管理を目的として,形成不全歯の病理組織像をとりあげ,特にエナメル質を主体として検討を行った.対象は,肉眼的に形成不全歯と診断した抜去歯のうち,歯牙表面の異常所見と関連した組織所見が明らかなもの7歯とした.観察方法は,障害部の肉眼的およびレプリカによる観察を行った後,未脱灰切片標本を作成し,一般光学顕微鏡,偏光顕微鏡,蛍光顕微鏡,マイクロラジオグラフィーにて観察を行った.検討に際してはエナメル質の形成不全を原因別に全身的原因によるもの,局所的原因によるもの原因不明なものに分けて行った.その結果,
1.全身的原因によるものでは,減形成を認めた乳歯でレチウスの成長線に沿ってエナメル質の欠損が認められた.また,石灰化不全を認めた症例では,表面の異常部と一致してエナメル質深層のエナメル象牙境付近にレチウスの成長線にそった低石灰化部が認められた.
2.局所的原因によるものではエナメル質減形成はレチウスの成長線に関連を持ち,エナメル象牙境は著しく乱れ離断されたり,エナメル質の重複やさらに一部では象牙質が隆起露出している部分を認めた.
3.原因不明なものでは白斑は表層から限局性に,また,レチウスの成長線に関連なく均一な低石灰化像が認められた4.7例中5症例にテトラサイクリンによると思われる蛍光線がエナメル質,象牙質ともに認められた.
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© 一般社団法人 日本小児歯科学会
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